当然のことであるが、都会での生活は、その便利さと引き換えに広い土地や空間というものを犠牲にせざるを得ない。
屋上やバルコニーでの植物の栽培は可能であるものの、多くの都会での生活者にとって、「収穫」などという概念自体が別世界のものといえるだろう。
ところが、ブルーベリーという果樹は、日が良く当たるバルコニーやベランダ、あるいは屋上というスペースがあれば、十分それを可能にしてくれる極めて珍しい果樹なのである。日当たりが良くて、テラコッタが置けるスペースさえあれば、スーパーやフルーツ店で買ってきたパック詰めのものよりも、遙かに美味しいブルーベリーを味わうことができる。
ブルーベリーは他のどのフルーツよりも日持ちがしない上、輸送性にも劣る。よって、買ってきたブルーベリーは、すでに傷んでいることが極めて多い。ブルーベリーの特性を理解し、生産・流通・販売が一丸となって品質管理を徹底しない限り、店で買ってきたブルーベリーが美味しい確率は極めて低いのである。
現実問題として、店頭で本当に美味しいブルーベリーを入手することは、運に頼るほかないだろう。また、本当に美味しいブルーベリーを味わった経験がある人自体が、極めて少ないのも事実である。
「都会の中の自然」のパートで語った500円玉サイズのブルーベリーはともかく、100円玉サイズのブルーベリーは大粒品種を選択すれば、都会の鉢植えでも十分に栽培可能なのである。
リンゴ、ブドウ、メロン、パイナップル、ミカン、イチゴなど果物屋、スーパー、百貨店には、たくさんの果物が並んでいるが、都会で、ましてや素人が、売っているものと同じくらいに美味しい果物を作ることは、スペース的にも、技術的にも無理であろう。
しかし、現在の日本のマーケットにおいて、ブルーベリーだけが、店で買ってきたものよりも自分で育てたものの方が美味しい唯一の果物なのではなかろうか。
土地利用型が基本の果樹栽培の中にあって、ブルーベリーは、都会でもおしゃれでヘルシーなアーバンライフを実現させてくれる果樹なのである。しかし、その一方で、日本固有の梅雨の問題をはじめとして、細根であるブルーベリーは、系統や品種によっては、かなりの脆弱性を見せている。環境に適合した品種の選択や栽培管理は、相当に難しい部類にはいるといえるだろう。
しかし、それを克服したらならば、微妙ながらも確実に各品種の違いや特徴を味わえるだけでなく、なによりも確実に「美味しい!」と感じる味覚を享受することができるのである。収穫された果実の写真は、東京六本木の屋上で収穫した早生の北部ハイブッシュ系品種ウェイマウス(Weymouth)、バークレイ(Barkeley)、スパルタン(Spartan)である。最後のの写真は、六本木ヒルズ森タワーを背景に、都会という環境でもしっかりと結実し熟し始めた南部ハイブッシュ系品種のサウスムーン(Southmoon)である。 |