都会で楽しむブルーベリー

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総責任者:渡辺 順司
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環境の紹介

都会の憂鬱
 ガーデニングブームとは、「花」あるいは「緑」というものの存在価値による「美しさ」や「楽しさ」あるいは「安らぎ」や「癒し」の効果だけがクローズアップされ、都市生活者は、それが傍らにある生活を夢想しているに過ぎない。
  煎じ詰めれば、ガーデニングとは農家の作業と同様なところに行き着くのだが、一般に語られるガーデニングという言葉の響きに、そのようなイメージは微塵もない。

  園芸店で鉢植えを買ってきて、置いておくところまでは誰でもできるのだが、枯らさずに継続して育てることは、意外と大変なことなのである。買ってきた鉢植えが来年も健全に生育している確率はどれほどのものだろうか。
  花や緑、あるいは収穫を楽しむには、その裏方の作業というものが必ず存在する。さらに、実際の栽培においては、予期しない多くの悩ましい問題が山積している。
 テレビドラマに登場する高級マンションの整然とした一室の風景が、実際の生活にはあり得ないのと全く同じである。
  夢想にふける都市生活者には、そのことがなかなか理解できない。しかし、一方で、農家の人というのは、裏方作業の繰り返しを当然の日常としてこなしているのが、非常に対比的で興味深い。

  ヒヨドリによる果実の被害はまだしも、都会では冬の間の食糧が少ないためか、スズメがブルーベリーの花芽をすべてついばんでいってしまうことがある。この被害に遭うと、その年は花も咲かず実も成らないブルーベリー株となってしまう。

  また、自然界の食物連鎖など全く成立していない都会では、コガネムシによるブルーベリーへの被害は、甚大どころか致命的である。
 コガネムシの成虫は、昼間だけでなく夜間でも大きな羽音を立ててやってきてはブルーベリーの葉を葉脈だけ残して食い尽くしてしまう。若い葉のみならず、バリバリと音を立てて成熟した厚く硬い葉もその対象としてしまう。これでは、美観も何もあったものではない。さらに、ブルーベリー株の地下茎には、沢山の卵を産みつけていく。
 成長が鈍った株を抜いてみると、直径20cmほどのポットからコガネムシの幼虫が十数匹も出てくることは稀なことではない。もうその時点では、ブルーベリーの根はことごとく食い尽くされてしまっており手のつけようがない。
 ポットごとに進入防止の個別対応も可能だが、所有株数が多いと、都会では網目の細かい防虫網までもが必要となる。これは、鳥害以上に厄介なものである。特にビル風の強い屋上では、その設置もかなり本格的なものでなければならない。よって、ブルーベリー1粒あたりのコストパフォーマンスは、相当なものとなってしまう。

 さらに、一般的には「病害虫が少ない」とされるブルーベリーではあるが、アブラムシや葉を虫食む幼虫類は、ビルが建ち並ぶ都会といえども、どこからともなくやってくるので防ぎようがない。これらは、毎日こまめに退治するしかないだろう。

 なお、ブルーベリーの品種同様、日本ではブルーベリーの病気の同定もほとんどなされていない。赤星斑点病、サビ病などは、品種によっては、かなりの感染力をもって拡がる。さらに、特定できないが成育に問題がある病気や、成育には問題はないが趣味栽培を前提とした美観上、許せないレベルの病気も多数見受けられるのが現実である。

 アブラムシを媒介としたり、剪定バサミによる感染や、葉が触れあうこと、さらには雨水によっても感染するというのだから、これは防ぎようがない。むしろ、耐病性のある品種を選ぶべきであるが、このような情報は、全くといっていいほど皆無である。さらに、高温多湿の梅雨時には、水はけが悪くなるため、これも品種によってはかなりの発生確率があるといえるだろう。

 ブルーベリーの栽培において定説となっている「病害虫が少ない」という評価は、必ずといっていいほど農薬を必要とする他の果樹と比較した場合の相対的評価でしかなと言い切ってもいいだろう。

  ブルーベリーのメリットだけしか語っていない園芸書籍の情報や種苗会社のプロモーション情報は、高温多湿の梅雨という固有の気候を前提とした日本においては、現実を無視したものといえるだろう。

  少なくとも日本の気候において、強健なラビットアイ系品種以外、多くの北部、南部、半樹高ハイブッシュ系ブルーベリー品種は、相当に脆弱であることは疑いようのない事実である。

 こまめに植え替えをはじめとした世話などをしないごく一般の趣味の園芸において、毎年健全に収穫を約束してくれるほどブルーベリーという果樹は強くはない。

  日本で入手可能なブルーベリー品種は、優に100品種を超える。しかし、梅雨という特殊な気象条件を持ち高温多湿な日本の環境において、それなりの耐病性があり、株が強く、さらに大粒で紅葉も綺麗であるなど、美観も重視する趣味栽培において、本当に推奨できるブルーベリー品種などは、ほんの数品種に過ぎない。むしろ、開発初期の古い品種の方が優位性を持つ場合も多い。

  特に、優良品種同士の極めて複雑な交配によって誕生した昨今の南部ハイブッシュ系をはじめとした新品種は、果実品質こそ優れているものの、日本での栽培するには、信じがたいほどの脆弱さを見せているものが多いのである。これらの事実も直視すべきであろう。




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