ペリカンの「スピリッツ・オブ・ガウディ」

存在感のあるペンケース

 過去に製作された秀逸な限定万年筆の中で、私が最も心惹かれたものは、2002年にペリカンが発表した「スピリッツ・オブ・ガウディ(Sprits of Gaudi)」でした。その理由は、限定品というカテゴリーに対するメーカーの徹底ぶりにあるような気がしています。

 付属する重厚な金属製の専用ケースの重量は1.5kg超、スペインが生んだ天才建築家アントニオ・ガウディ(Antonio Gaudi Cornet:1852~1926年)が手がけた「カサミラ(Casa Mila)」の屋上に設置された通風口をモチーフにした、まさにオブジェともいうべき存在感があります。

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入手困難かつ秀逸な逸品

 この万年筆の入手には、モンブランの「ヘミングウェイ」や「ロレンツォ・デ・メディチ」以上に困難を極めました。その生産本数は「ヘミングウェイ」が20,000本、「ロレンツォ・デ・メディチ」が4,810本、そしてこの「スピリッツ・オブ・ガウディ」は1,000本なのですから、もはや市場に存在しないのは当然のことかもしれません。最終的には海外の二次マーケットも視野に入れ、ようやく入手することができました。

 実際に間近で手にとって見てみると、やはり個人的には最も素晴らしいと感じる万年筆であるとともに、客観的に見ても極めて秀逸なプロダクトだと感じました。一部の評価として、ペンそのものよりもケースの製作費が多くを占めているとか、ペン先自体は他のペリカン製品と何ら変わらないという意見がありました。しかし、限定万年筆という商品は、仮にそれらを前提としてもオリジナリティ溢れる付加価値創出がしっかりと出来ているか否かが重要であると考えます。

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万年筆メーカーのブランド力

 この「スピリッツ・オブ・ガウディ」同様に入手が困難で、結局「万年筆ミュージアム」の掲載に間に合わなかったものに、同じくペリカンの四神シリーズの初代「ゴールデン・ダイナスティ」があります。こちらも生産本数がわずか888本で、モンブランの作家シリーズやパトロンシリーズとは格段の差があります。ほとんどの限定万年筆において、ペリカンよりもモンブランの方が生産本数が多いのは、そのブランド力のあらわれといってもいいでしょう。

 ブランド戦略あるいは販売戦略上、「神話づくり」のために、あえて生産を控える手法もありますが、おそらく万年筆マーケットではメーカーがそれを実践しているとは考えにくいです。したがって、各メーカーは自らのブランド力に応じた本数を生産していると思われます。