限定万年筆

限定万年筆への羨望

 万年筆に興味を持った当初、過去に生産された稀少な限定万年筆には羨望を抱いたものです。モンブラン作家シリーズやパトロンシリーズは、モンブランジャパンにすらすべてが揃っていませんでした。

 したがって、非売品として展示されているものは、ほんの一部でしかなく雑誌のバックナンバーで写真を見ることができるくらいでした。また、ほとんどカタログと化している多くのメディアはけっしてマイナス部分を語ることなどなく、その情報量自体もメーカーから提示されたレベルでしかなく、けっして多くはないのです。

限定万年筆

シリーズ化された限定万年筆

 限定(limited edition)という響きは、いわば心理的に付加価値を高める手法であるわけですが、その付加価値を維持継続していくことは相当に困難なことのようです。というよりも事実上無理な話なのかもしれません。それほど心の琴線に触れるような逸品を、毎年創り出していくことは難しいことなのかもしれません。

 私の辛辣な評価ですが、それは10年(10本)に1度(1本)程度な気がします。しかし、これではあまりにも少な過ぎるでしょう。結果として企業努力が感じられない気さえします。

 モンブランでさえ明らかに商品力に乏しいものを毎年のように送り出してくる気がします。もちろん、説明なしに感動を生むようなプロダクトは最高なのですが、説明を理解したとしても費用対効果が頭をよぎるようなプロダクトでは、もはや企画力はもちろんのこと商品力不足といわざるを得ないでしょう。最近の製品では、販売のスタッフが現物を手にして、発売前の写真よりも良くてホッとしたと言うようなレベルなのです。

チャップリンの名言

 俳優、脚本家、そして映画監督でもあった喜劇王チャップリンは、インタビューで「あなたの作品のうちで最高だと思うものは何ですか」とたずねられ、「Next One!(次を見てくれ)」と答えたといいます。

 私は、当時モンブラン作家シリーズをすべて揃えた時に、このチャップリンの逸話をもとに、自らの表現として実際には送ることのないモンブラン宛のメッセージを作ってみたのです。そして、このコンセプトに共鳴する識者はたくさんいました。実際、これに関連した内容は2つのメディアで取り上げられました。

Next One!

今現在のメッセージ

 万年筆に感じた「魅力ある何か」把握する。そして、それをノウハウとして昇華させた後、自らのフィールドにフィードバックする。それは並大抵のことではないかもしれませんが、その投資と努力によって得られるものは絶大だと確信していました。しかし、私はその「魅力ある何か」を掴むと同時に、その反対側にあるものまでもが見えてきた気がしています。私が「魅力ある何か」を感じたこの万年筆の世界でさえも、心の琴線に触れるような逸品は、そう簡単には生まれてこないのです。だからこそ、貴重だといえるのかもしれませんが、そのようなマイナス思考は何も生み出さないでしょう。

 新たな見識を得てからの「今現在のメッセージ」は、活気に乏しい印象があることでしょう。しかし、これが私が抱くイメージであり現実なのです。「Next One!」メッセージの頃は期待に満ちていた気がしますが、現実が見えている方を私は望みます。現実を直視することなしに改善や発展は望めないと思っているからです。

Only the First