すでに絶版になった書籍ではあるが、1984年に出版された「ブルーベリーの栽培」(誠文堂新光社)という名著がある。その239ページにも及ぶ内容は、それまでの日本のブルーベリーの歴史を語り尽くすとともに、多くの示唆に富んだブルーベリーのバイブルといってもいい内容を誇る。
そして、その一部からは、当時ブルーベリー黎明期の先駆者の「志」や、ブルーベリーの生産と販売における本来の「あるべき姿」を感じとることもできる。
この書籍は、初版3000部のみの発行で、すでに入手不可能な書籍であるだけに、所有者には「お宝」的な存在であり、後年のブルーベリー愛好者に とっては垂涎の的であるに違いない。
しかし、これは、もはや過去の書籍なのである。極めて客観的かつ冷静に、その絶版という事実を直視するならば、そこには相応のマーケットボリューム自体が存在しなかったか、あるいはマーケットに受け入れられなかった内容であったことを意味する。
つまり、この書籍が消滅した事実とは、日本のブルーベリーマーケット自体が極めてマイナーな存在であるか、あるいは趣味の園芸を前提とする一般大衆をターゲットにした場合、このように専門に偏りすぎた内容は、面白く楽しいガーデニングをイメージする大衆が欲する内容とは乖離していたことを物語っているのである。
なお、最近、大手出版社においてブルーベリーに特化した園芸書籍の出版企画があったという。しかし、昨今の出版業界においては、原価積み上げ方式で価格が決定されるのではなく、消費者が買うであろう安価な価格を前提に出版企画をせざるを得ないという。さらに、ブルーベリーというマイナー果樹を考えた場合、マーケット自体が存在しないという結論に至ったという。結局、ブルーベリーに特化した出版企画は頓挫し、やむなくベリー類全体という括りになったという。
確かに、日本でのブルーベリーの位置付けは、その通りなのであろう。実は、本サイト自体も、この絶版となった「ブルーベリーの栽培」以上に、メジャー受けするものではないことを最初から確信している。なぜなら、本来的にマイナーなブルーベリー自体をテーマとしているだけでなく、本サイトの基本コンセプトに根ざす「品種の重要性」ということ自体が、そのマイナーな中にあっても、さらに注目されてはいないテーマであるからだ。
そして、本サイトの基本コンセプトと共通の感覚をなすような記述が、この絶版となった名著「ブルーベリーの栽培」の一部にも存在するのだから、これはまさに見事な符合であり、その事実の裏付けともいえるだろう。しかし、私は、この「正確な品種にこだわる」という極めてマイナーでニッチな主張が、ブルーベリーにおいては、実は非常に重要テーマだと考えている。
それは、極めて逆説的ではあるが、究極的には、ブルーベリーには、美味しいブルーベリーと美味しくないブルーベリーしか存在しないからだ。そして、一般に販売されているブルーベリーは、かなりの確率で美味しくはない。その最大の理由は、消費者のみならず、生産・流通・販売におけるブルーベリー自体への認識不足がその背景にある。ブルーベリーは、他の果樹と比較して品種間に大差がないのは明らかな事実である。しかし、その品種間異差というものは、確実に存在する。そして、前提条件として正確な品種をしっかりと見極めていない限り、結局は、美味しい品種も、美味しくない品種も、大粒も、小粒も、ハイブッシュ系も、ライビットアイ系も、すべて同じブルーベリーとしか見なされなくなるのである。だが、先の認識不足を前提とするならば、実際には何の実害もないと感じ、それでもいいと考えるのが、大多数を占めるのである。そのような状況下にあって、この「品種の重要性」というテーマを一般化させようという無謀な試み自体が、一つの楽しみであり、チャレンジなのである。
これこそ、趣味でありながらも、わざわざ独自ドメインまで取得して実践する価値のある、極めてゲーム感覚の強い本当の意味での趣味のサイトであると考えている。 |