|
品種Xは、その多くが日本への導入当初の1950年代から現在に至るまで、一般にはブルークロップであるとされてきた品種である。よって、古くからブルーベリーを栽培している農家には、必ずといっていいほど存在する。
現在でも、この株が日本各地に大量に存在している。
そして、多くの地域では、現在でもそのままブルークロップとして扱われ続けている。実際に多くの真面目な農家では、本来大粒種であるはずのブルークロップが大粒にならないのは、自らの栽培方法の未熟さによってではないかと自責の念を抱かせ続けてきた品種でもある。あるいは、その果実サイズゆえに、日本では、母国アメリカでこれほどまでにシェアを誇る有名なブルークロップが、この程度のものであるのかという印象を与え、ブルーベリー自体のイメージや価値を低くたらしめてしまった印象も拭いきれない問題品種なのである。
しかし、この品種Xは、品種の同定に関して初期の段階から極めて熱心であった長野県の農家、種苗家、果樹試験場、あるいは東京農工大学の努力によって、実際にはかなり早くからブルークロップではないことが明らかになっていたのである。
1974年に、ようやくブルークロップの正確な穂木が再導入されたため、本来的には、この時点以降ブルークロップの混乱は収束すべきはずであった。
しかし、実際にそうはならなかったのが、やはりブルーベリーのブルーベリーたる所以といえるだろう。その情報は、広く一般には伝わらず、品種Xは、その後もずっとブルークロップとして扱われてきたのである。
また、当然、この1974年の時点で本物のブルークロップという品種がどれであるかは、明らかになってはいたものの、この品種Xが一体何という品種であったのかは、もちろん明らかになってはいない。
この品種Xは、小町園松澤社長所蔵の当時のスタンレイの写真とは若干異なり、また元長野県果樹試験場小池洋男氏のスタンレイの記憶とも異なる品種である。
したがって、少なくともこの品種Xは、スタンレイではないと見るのが妥当である。しかし、私は、この2つの否定的事実があったとしても、この品種Xが、実は本物のスタンレイなのではないかと考えていた。
それは、各地の栽培農家を訪ね、多くの研究者や栽培者から聞いた話を総合すると、この品種Xは小〜中粒種ゆえに、その評価が全くといっていいほど高くないにもかかわらず、信じがたい程の底力を持った品種だからである。
かつて、ブルークロップであるという品種の誤認によって広く普及したという背景があったとしても、現在でも、古い品種ながら実際のところ積極的に新品種との更新が実施されていない。品種Xは、今も数多く存在し、それなりの実績を上げている品種なのである。
|