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品種Yは、実際に一般マーケットでは、かなりの流通量がある品種である。しかし、その流通の仕方が尋常ではない。
この品種Yは、時によって、あるいは地域によって、様々な品種名が付与されて流通している極めて珍しい存在である。つまりは、複数の品種名を持ちながらも、結局は同じ品種である、いわば七変化品種なのである。
その多くはスタンレイとして扱われてはいるものの、ある時はブルーレイとして、そしてある時はアーリーブルーとして、そしてまたある時はバークレイとしても販売されている品種なのである。この傾向は、一般の園芸店、大規模園芸店、ホームセンターなどでは特に顕著で、21世紀になってからも、むしろ拡大しているかのようにも感じられる。
なぜ、この品種だけが特に様々な品種名を付与されて、これほどまでに一般に流通しているのかが、最初は全く理解に苦しむものであった。
同様に信頼するに足る親株が存在していないにもかかわらず、一般によく流通している品種にジューンやコンコードがある。しかし、ジューンは、別の品種名が付与されて出回ることはあまりない。また、コンコードも、幾つかの生産農家では、いまだに栽培が継続されており、市場に出回る苗木との一致の確率もかなり高い。よって、これらの品種は、事実上さほどの混乱が見受けられない。だからといって、もちろん一目でわかるような目立った特徴があるといえる品種ではない。
だから、なぜ、この品種Yだけが、これほどまでに多くの品種名を付与されて販売されることとなったのかに大きな疑問があった。
しかし、多くの異品種の混入を前提としていた日本のブルーベリーの導入の歴史を考えるならば、この品種Yは、複数回に渡って、それもその度に別の品種名が付与されて日本に導入されたと考えるのが、この現状を説明するに最も納得がいく答えであるようだ。
そして、実際にそれを裏付けるかのように、この品種Yは、群馬、東北、長野の事例から、日本への導入において、少なくとも1回は、スタンレイとして導入されたものであることが明らかである。
そして、また以下の東京農工大学の事例から、やはり初期の段階において、ブルーレイとして導入されたことも明らかである。1951年以降、アメリカより日本に導入された北部ハイブッシュ系品種のうちブルーレイ、ブルークロップ、アーリーブルーが異品種であったことは、東京農工大学や長野県果樹試験場、そして同じく長野の熱心な種苗会社や生産農家の努力によって、その後に明らかになった。そして、最初の誤った品種の導入からなんと20年以上も経った1974年になって、ようやくニュージャージー州立大学から東京農工大学に、この3品種を含む11品種の正確な穂木がもたらされたのだった。そして、これ以降、東京農工大学では、初期の誤ったブルーレイを、通称「オールドブルーレイ」として扱ってきた。
そして、今回品種Yと特定された品種と、この通称「オールドブルーレイ」とされてきた品種が、同一のものであることがわかったのだった。つまり、品種Yは、日本に初期導入されて以降20年近くもの間、ブルーレイとして扱われて来たことになる。本来、大粒種のはずのブルーレイが、なぜ大粒ではないのかと、多くの生産農家が疑問に思ってきた品種が、実は品種Yだったということになる。そして、その長年にわたる誤った品種の影響は、現在でも大きく尾を引いているのである。
なお、この事実をさらに詳細に考察するならば、初期導入の品種群の中には、スタンレイとされた品種Yと、ブルーレイとされた品種Yとが重複して存在していたことになり、ここには大きな疑問が残る。つまり、日本では、長い間、全く同じ形質の品種を別々の2品種として扱って来たことにもなるからだ。
しかし、この事実も、ブルーベリーの栽培自体にも苦慮していた当時を勘案すると、やむを得なかったのではないかと想定される。まさに、ブルーベリーの黎明期であったがゆえに、仮にそのような観察眼があったとしても、母国アメリカからもたらされたブルーベリーの品種ラベルを疑う余裕などなかったと考えるのが妥当ではないだろうか。以後の多くの苗木生産者の増殖における品種混乱の最大の原因に当てはめても、親株の観察よりも品種ラベルを信じることが優先されるという心理は、品種間異差が極めて微妙で、その見極めが難しいブルーベリーにおいては、全く想像に難いことではないといえるだろう。
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