都会で楽しむブルーベリー

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総責任者:渡辺 順司
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ブルーベリーの旅

32.品種Zとは
 品種Zは、早くからブルーベリー栽培に取り組んでいた石川県能登半島柳田村の一部でスタンレイとして扱われてきた品種である。その後、この品種Zは、不明品種として新潟県の農園で、さらには群馬県でもその栽培が認められた。また、東京のブルーベリー園にも、後に日本で適当に命名された正規登録品種ではない名称で存在する似非品種として確認されている。似非品種として流通していたものの、この品種Zは日本各地に古くから流通していた品種であることは間違いない。

 古い産地である柳田村と、新潟の栽培農家にも昔から存在していた品種ということで、ブルーベリーの日本導入後に実生などによって、生まれた品種ではないと考えられる。

 ブルーベリーの導入後、安易に行われた多くの実生によって、品種がさらに混乱したいくつかの産地が存在する。しかし、柳田村と新潟ではそのような事例はなく、別の地区でも、同一の個体が認められたことは、それを裏付けるものといえるだろう。なお、東京では、サンセットという品種名で、この個体が見つかったのであるが、既存品種への勝手な命名や、安易な実生によって誕生した実績が伴わない似非品種の流通は、ただでさえ品種の混乱を極めるブルーベリーマーケットをさらに複雑なものにしている。

 本来的に、各国の農務省にあたる機関が正式に認めたものでない限り、品種という言葉を使うべきではないだろう。実生によるオリジナルな品種の創出は、栽培者の夢のようなものであるが、確率論でいえば、州や国を挙げてそれに取り組んでいるアメリカと比較するならば、全くといっていいほど規模の違う個人や日本の営利栽培者が太刀打ちできるわけがない。

 また、仮に、偶発的に既存品種に該当するほどの実力を持つ個体を育成できたとしても、何年にも渡る資質の確認や母樹の管理などまで研究所レベルの設備や忍耐が必要とされる。よって、その個体に管理責任を持てる栽培者は稀有に等しいはずだ。よって、その個体が正確に継承された保証などどこにもない上、その特性、開発目的、開発経緯、開発者等を明らかにしているものは皆無に等しい。

 初期のアメリカ農務省正規登録品種であるこれらの品種ですら、これだけの問題を孕んでいるのだから、さらなる混乱を防ぐためにも、個人が趣味の延長や栽培業者が面白半分で行った実生には十分な責任を持つべきであり、責任を持てないならば、絶対にマーケットに出すべきではない。

 消費者サイドとしても、正規登録品種でない適当な名称を付与された素性の知れない似非品種を購入するメリットはどこにもないのである。論理的に考えるならば、明らかに既存の正規登録品種よりも、当然劣るはずの似非品種が、真新しい名称のラベルを付与されると売れていってしまうのも、あるいは、その存在を許してしまうこと自体、ブルーベリー苗木マーケットの未熟さを意味しているといえるだろう。

 ところで、品種Zの特徴であるが、まず葉が鋸歯で比較的小さめで厚めである。
 これは、大きな特徴といえる。北部ハイブッシュ系の初期開発品種で、葉が鋸歯であるものは、現在わかっているものではランコーカスしかないので、これに関連する品種と考えるのが妥当かも知れない。なお、新梢時の葉は、かなり細長い場合があり、これも大きな特徴かも知れない。

 果実は、小粒で、選抜野生種であるかのように、非常に濃い野性味のある果色をしている。また、完熟前の幼果は、ラビットアイ系品種のように非常に赤味が強い。品種同定がなされている野生選抜種にルーベルがあるが、ルーベルは野生選抜種であるにも関わらず、天性の素質の良さから、果実においては改良品種のようなイメージを持つ。しかし、品種Zは、ルーベルよりも明らかに野性味がある品種といえるだろう。すると、先のランコーカス同様に葉が鋸歯であることを考え合わせると、ランコーカスの交配親であり、さらに野生選抜種でもあるブルックスかラッセルと考えるのが有力と思われるが、やはり、それは単に推定に過ぎない上、何の証明もできないことはもちろんのことだ。

 品種Zの萼は、若干大きめで直立しているため、形状的にも良く、品種X同様、ケーキ作りのパティシエには好まれる品種といえるのではないだろうか。果実品質的にも、完熟すると甘味が強く、やはり若干の濃厚さが感じられる品種である。しかし、一般の営利栽培においては、全般に小粒であることが、大きな欠点となるだろう。

 品種Zは、品種Xと品種Y同様に、現在の日本においては、全くその品種名を知る手掛かりのない品種ではあるが、品種Xと品種Y以上に、野性味が強いため、北部ハイブッシュ系初期の開発品種か野生からの選抜新種であることは間違いないだろう。
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