アンティークの定義

 アンティークの明確な定義は、実際には存在しません。一説には100年を経過したものという定義があるようですが、これはアメリカが定めた通商関税法(1934年)の考えによるものに過ぎません。その後、世界貿易機関(WTO)がこの基準を採用したため、すべての加盟国が従うことになったわけです。つまり、「アンティークとは100年を経過したもの」といわれる背景には、実際にはそれと何の関係もない「関税法」があったわけです。

 そして、そのさらなる背景には、アメリカよりも古い歴史を有しアンティーク製品を育んできたイギリスをはじめとしたヨーロッパ各国に、実は明確な定義がなかったことがあげられます。私は、この関税法に基づく100年ルールの定着によって、その定義自体が曖昧であるがゆえに真の価値を見極めようとしてきた意識が損なわれてしまう危険性があると思っています。

 この定義以外では、アンティーク(antique)、ジャンク(junk)、ラビッシュ(rubbish)、ヴィンテージ(vintage)などという概念がある程度使い分けられているようですが、日本では完全に混在しているのが実情でしょう。これは、アンティークに対する価値認識と関与度によるものといえます。私が、日本のアンティークショップをまわって感じたことは、実際にはそのほとんどが「がらくた屋(ジャンクまたはラビッシュ)」だということです。まあ、そうでなければ、商売にならないのも日本のアンティークマーケットなのかもしれません。しかし、最も重要なのは、ショップがその事実を認識して商売をしているか否かということなのです。

アンティークショップ

 私が考えるアンティークの定義とは、ある程度の時間経過(経年性)は当然必要でしょうが、100年という期間で限定できるものではないと考えます。いくら古くても価値に乏しいものは、当然「アンティーク」と呼ぶに相応しくないでしょうし、100年を満たしていなくても誰もが認める「アンティーク性」は存在するはずです。

 したがって、ある程度の「経年性」にプラスしての「稀少性」と「アート性」が、アンティークの定義に相応しいものだと思います。そして、それがある程度の普遍性を持つことによって「価値性」へと繋がるわけです。

 ただし、この4つのモノサシを当てたとしても、そこには最初から正確なメモリなど印してないのです。あるのは、経験値に裏打ちされた価値あるものだけを的確に見極める審美眼なのかもしれません。それゆえに、極めて広範囲にわたる「真のアンティーク性」を見極めることが可能なのではないでしょうか。

 前述したように、「アンティーク」に最も理解や造詣の深いイギリスをはじめとしたヨーロッパのショップやその利用者たちは、実際にずっとそのようにしてアンティーク文化を築いてきたはずなのです。