セッターとポインター

 私が感動を覚えたヴィエナ・ブロンズのモチーフに、「キジを咥えたセッター」と「シギを咥えたポインター」があります。この2匹を向かい合わせると、まるで「対(つい)」を前提とした二体の創作物であるかのような錯覚をおぼえます。各々の犬種の体格や特徴だけでなく、その性質までもが表現されているかのようなリアリティ感は、何度見ても圧倒されるばかりです。

セッターとポインター

 さらに、その各々は、セッターとポインターそれ自身の個体のみならず、その口に咥えられた獲物の細部に至まで精密かつ繊細に作られています。セッターに咥えられたキジの背面は下を向いており、裏返さなければ見えない部分であるにもかかわらず極めてリアルに表現されています。一方、シギの胸の羽毛や翼の開き方、さらにはポインターに咥えられて前後に開いた足のリアリティさは見事としかいいようがありません。

キジとシギ

 私はこの2つの作品と出会ったことから、あらためて「セッター」と「ポインター」という犬種の由来を知り、時代背景を前提とした当時の交配目的というものに驚きを感じるとともに納得したものでした。

 セッターとポインターは、ともに狩猟目的のために作出された鳥猟犬です。セッターは、獲物を見つけると、「セッティング」して知らせ、飼い主の合図とともに威嚇し飛び立たせるという極めて高度な能力を持つ犬種だそうです。一方、ポインターは、見つけた獲物に対し鼻先を向けシッポを張り、片足をあげた状態で静止し、その「ポイント」を示すという同じく高度な能力を持つ犬種なのです。

 犬種としては、セッターよりもポインターの方が性質的には獰猛で闘争心も強いそうです。そのあたりの違いも、この2匹の創りに如実に現れている気がします。この二つは、制作者の意匠までもが伝わってくる凄みを感じさせる作品だと思います。